わけのわからんタイトルですね。まあ、渦さんが書いてたジャイロボールの話を膨らませて、ピッチャーの手を離れたボールに何が起こっているのかというネタです。
空中を飛んでいるそのボールに作用するパラメータとして考えられるのは「位置」「移動の向きと速度」「回転」「空気」「ボール表面の形状」ぐらいですかね。
野球のボールの縫い目は本来製法上どうしてもついてしまうものだったんですが、あとになってけっこう重要な働きをしていることがわかってきました。そのため軟式野球のボールなどは硬球のように盛り上がった縫い目をつけることが困難なのでボールの表面全体にでこぼこ(ディンプル)をつけることで代用しています。
その重要な働きとは「空気抵抗を減少させる役割を持つこと」。でこぼこがあった方が空気抵抗が少ないんです。
こういう球状のものがある程度の速度で空気中を移動すると、進行方向の後ろ側に渦を発生させ、その渦の流れに引っ張られることでボールにブレーキがかかります。つまりボールにかかる空気抵抗というのは、ボールの前側ではなく主に後ろ側で発生しているんです。意外でしたか?
この渦は大きなものほどボールを強く引っ張ってブレーキをかける力が強くなります。そこでわざと小さな渦(カルマン渦)を作ることで大きな渦を作らせないようにすれば、結果的に空気抵抗は減るわけです。
この仕組みは航空機やF1マシン、新幹線(騒音低下が主な目的)などにも使われていて、「ボルテックスジェネレータ」と呼ばれています。
500系新幹線のボルテックスジェネレータ(支柱を縦に走る波打った突起)はボールの縫い目っぽく見えなくもない
硬球の縫い目、軟球やゴルフボールのディンプルなどはこのボルテックスジェネレータと同じ働きをして空気抵抗を少なくしています。
ところが縫い目というのはボール表面のごく一部しかないため、ただ存在するだけではそれほど渦を作ってくれない。ボールが回転することで次から次へとあちこちに渦を作っていくことになります。
回転が少ないと十分に渦が作られず、徐々に速度が低下していくうちにある段階でより大きな渦にまとまってガクンとスピードが落ちる。これがフォークボール。
だから物理学的に説明すれば、フォークボールは落ちる球ではなく「空中で突然急ブレーキがかかる球」なわけです。ボールが重力に引かれて下へ向かう速度はキャッチャー方向に移動する速度に比べれば十分に小さいので、ブレーキがかかるのはキャッチャーへ向かう成分のみで落ちるペースは変化しません。
フォークが打ちにくいのはボールの軌道が下へ変化すること以上にこの「空中で急ブレーキ」によってタイミングが取りにくいことが影響しているんでしょうね。
上で説明したように、空気抵抗という視点では縫い目は非常に重要な存在です。「ボールの回転によって軌道が変化する」と言いますが、もしも縫い目がなかったら回転していてもあれほどの変化はまず起こりません。だから厳密な言い方をすれば「回転することでボール縫い目が移動するため変化する」ということになります。
ボールの回転については普通「進行方向(キャッチャー方向)に対してどういう回転をしているか」という視点で説明されますが、もう一つ「縫い目に対してどう回転しているか」というのも重要だということがわかります。
でもボールの縫い目ってくねくね曲がったややこしい形状なので、回転との関係を言葉で表現するのは難しいですよね。そこで回転軸を北極と南極と見立てたとき、赤道に当たる部分を何本の縫い目が横切っているかで「2シーム」「4シーム」と分類するわけです。
渦さんがmixi日記で紹介してくれた「ジャイロボールとは?」には「対称ジャイロ」「非対称ジャイロ」の図が出ていますが、対称ジャイロでは渦の発生する縫い目の位置が赤道部分に等間隔に並んでいて、どの方向にも同じように渦ができます。
それに対して非対称ジャイロは渦のできる側とできない側があり、しかもその位置はボールの回転によって刻々と変化します。だから非対称ジャイロの変化は複雑で、しかも渦の発生量が少ないので普通の球よりもスピードの落ち込みは大きいわけです。
※カルマン渦は物体の後方に発生するものなので、発生ポイントになるのは空気の流れに多く当りかつボールの後方に影響を与える「キャッチャー方向を北極と見たときの赤道部分」になります。
他の球種でも前や後ろはあまり考えず、この「キャッチャー方向を北極と見たときの赤道部分」で縫い目がどういう動きをしているかだけに注目すれば十分です。
フォークボール、ジャイロボールときて最後に普通の回転系の球種と、なんだか順序が逆になってしまいました。
こちらは渦の発生というより、縫い目が気流に対してどういう動きをするかと考えたほうがわかりやすいです。
ボールが移動すれば、ボールから見ると前から後ろに流れる空気の流れがあることになります。これに対して縫い目が後ろから前に移動していくと、縫い目は向かい風の中を突き進むことになり、空気は邪魔をされて気流は遅くなります。
逆に縫い目が前から後ろに向かう場合、空気の流れと同じ方向に進むためそれほど障害にはなりません。さらにボールの正面に当たった空気はボールの回転によって「前から後ろに向かう側」に流されます。流れ込む空気が増えることで気流の流れは速くなります。
一つの流れの中に速い側と遅い側ができると、速い側では圧力が下がり遅い側は圧力が増え、遅い側から速い側へ向かう力が発生します。(ベルヌーイの定理)
特に球体や円柱の回転によってこの力が生まれる場合を「マグヌス効果(マグナス効果)」と呼ぶようです。
これによりたとえばバックスピン(通常のストレート)であればボールの上側が「前から後ろに移動する、流れの速い側」となるので、上向きの力が働いてボールの落ちる速度は遅くなります。
さて、ここまで書いたようにボールの変化は空気との相互作用によって生まれるものです。だから空気が変われば変化のしかたも変わってきます。
具体的にはたとえば風。ピッチャーから見て向かい風の場合、ボールは自分のスピード以上に速い流れの中を進むことになるので変化は大きくなり、逆に追い風であれば流れがゆっくりになるので変化は少なくなります。(空気抵抗は減るので球のスピードは速くなるけど)
このことは割と古くから知られていて「向かい風の時は変化球」というのはけっこう常識となっています。
また空気の密度が高ければそれだけ変化は大きくなります。もちろん気圧もそうですが、けっこう重要なのが湿度。
水蒸気を多く含んだ空気は同じ体積で比較すると「重い」ため、圧力差によって生まれる力も大きくなるんです。
湿気が多いとボールへの指のかかりもしっかりして滑りにくくなるためそれによる回転量の変化も大きいですが、回転によってかかる力も大きくなっているはずです。
乾燥しているときにはロージンなどで滑りにくくすることはできても、空気の湿度はどうしようもないのでどうしても変化は少なくなるわけですね。
以上、渦さんの日記がきっかけなだけに、渦についてとか書いてみました。
ジャイロ ボールのリンク集形式のサイト情報です。の情報収集にお役立てください。