2003-10-09 ドラゴンズ落合監督

ブレーブスファンとしては伊原監督のことを書きたいところだがネタがない。
で、落合は好きな選手だったけど、監督としてはヤバい理由を書いておこうかなと。

だれかを手本にしようとは思わない。独自のものを作り上げていきます
この言葉も本心だろう。自己流を目指してこそ落合らしい。でもその根底には稲尾から受けた影響が大きいことは間違いない。

古い話だけど、落合は「稲尾信者」だ。稲尾は84-86年にオリオンズの監督を務め、2、2、4位の成績。その間に落合の2年連続三冠王や西村の盗塁王など個人タイトルも獲得している。立派なものだが、86年の4位転落などを理由に解任されている。
稲尾の方針は「放任主義」。プロであるからには練習や調整は自分なりのやり方を見つけて自己責任と自己管理でやっていくべきといった感じ。コーチは教官ではなくアドバイザーやサポート役という考え方。さすがに連携プレーなんかは個人で好き勝手やるわけにはいかないけど。
その結果実績のある村田兆次や落合のような選手はかなり活躍した。でもその一方で仲間意識を大切にする体育会系な考え方の選手には評判が悪かった。その筆頭がミスターロッテ有藤。また口出しできるとこが少なくなって権力を制限されたコーチ陣からもあまり支持されない。こういったことが稲尾解任劇の裏の理由にもなっている。

個人的にはこういった選手の自己管理を尊重するやり方はプロとしてあるべき姿だと思う。
現に稲尾の1、2年目に2位、メジャー流自己管理を持ち込んだバレンタインも2位、権堂ベイスターズが優勝など「放任主義」は立派な結果を残している。
その一方で稲尾3年目4位で解任、権藤の2、3年目3位止まりのように長続きしない。実績のある選手はいいけど、後に続く選手が育たないのだ。
そもそもメジャーでは日本より自己管理が重視され、それなりにうまくいっている背景にはルーキーリーグ、A、AA、AAA、さらに独立リーグまで存在する層の厚さがある。こういった下位リーグではそれなりに「指導」も行なわれているし、その中で自分のやり方を確立して抜きん出た選手がメジャーに這い上がってくる。
日本で同じやり方をしたらあっというまに選手が枯渇してしまうだろう。プロとアマの間に大きな壁があることも日本のプロの層の薄さの一因だ。
そんなわけでベイスターズ権藤博監督は日本一になったとはいえ、個人的にはあまり高く評価していない。あれは前年までの「権藤コーチ」他が育てた戦力が整っていて、珍しく「放任主義」が成功する条件が揃っていたレアケースなので。
もちろん監督としてヘボではないから優勝できたのだとは思うけど、優勝したのは監督としての力より前年までのコーチとしての貢献の方が大きな理由になっている気がする。

落合というと練習嫌いで天才肌のイメージが強いが、オリオンズ時代はかなり練習量が多い方だった。ただコーチのいうことをあまり聞かず自分のやり方にこだわったので練習そのものを嫌っているような印象を持たれてしまった。
「技術的なことで、コーチから教えてもらったことは何一つない」と言い放つ田尾も似たような系統の選手だった。こういう考えの選手は好きだけど、日本では決して主流にはなれない。

さて、落合ドラゴンズは?
選手層自体はそこそこに揃っているように見えるけど体育会系の星野イズムが色濃く残っている体質、落合の考えるような「プロ」の意識を持っている選手は少ない気がする。現役時代の落合の影響なのか山崎はそういうものを持っていた気もするが、すでにいない。いたとしても今さらチームを引っ張る力は残っていないだろう。
立浪、谷繁、野口あたりは自由にやれて結果を残すだろう。また若い福留あたりは落合によってさらに大物化する可能性もある。でもチーム全体を見れば落合流で成果を出すにはもうひとつ底上げが必要な状態ではないだろうか。
「改革」を目指す球団側の思惑からすれば落合は確かにいい刺激になるだろう。でもそれを成功に結び付けるには、まだ条件が揃っていない。

トレードや外国人選手獲得による補強を断り、現有戦力で戦う
ちょっと意外だった。落合流のやり方で全ての選手が成功するわけではないことは本人もわかっているはずだ。そういう選手はトレードに出して活躍の可能性を広げ、一方で落合の考え方に合う人材を獲得した方がお互いのためになる。
まずは選手ひとりひとりを直接見極めてからという考えなのかもしれない。しかしシーズン途中で山田を切った球団がのんびり構えてくれるか不安がある。

たぶん一部の主力はのびのび大活躍、その一方で伸び悩む一軍半がゴロゴロでレギュラーを固められないという状態になると予想。

2003-11-04 プロ野球球団と親会社との関係

今回はいつも以上に憶測に基づいた内容になっているので話半分で受け取ってください。

小久保の移籍は非常にショックだったけど、日本一になったことであの球団が窮地に追い込まれたことは多くの人が予想していたことなので「こういう形で皺寄せが来たか」という衝撃だった。
そこでプロスポーツチームと親会社、スポンサーの関係について表面に現れにくい部分について乏しい知識と推測を基に書いてみます。 「プロスポーツチーム」とわざわざ書いているように野球だけでも日本に限った話でもなく、程度の差はあっても世界中のプロチーム全般に当てはまると考えて差し支えないと思う。
(「親会社とスポンサー」と書くと長くなるし、区別が明確でない場合もあるので以下では単に「親会社」として書きます)

親会社(とそのグループ会社)から提供される資金は大きく分けると「出資(資本提供)」「広告」「肖像権、キャラクターグッズなどの使用料」「チケットの買い上げ」といったところだ。

「出資」はオーナーとしての特権かつ義務であり、これがあるからこそチームの経営に口を出せる。
チームからすればまずこれが無いとなにも始められないし多いに越したことはないけれど、あくまで軍資金であって「収入」ではないのでどんなに多くても利益には直接繋がらない。
そこで親会社はチームの収入を増やして経営状態を健全にする(見せかける?)ために以下のような支援もしている。

「広告」として一番大きいのはユニフォームに入れるロゴ。
新聞や週刊誌などに写真が載れば、広告料を払わずに社名を新聞に大きく出すことができる。テレビ中継ともなれば、特定の社名や商品名をできるだけ露出しないことになっているNHKでさえ堂々と社名を画面に出してもらえる。
ただしプロ野球の場合、ユニフォームに広告を入れることは長い間禁止されていた。現在でも広告を入れることができるのは袖の部分やヘルメットの横など、ごく一部に限られている。
しかしチーム名であれば一番目立つ胸の部分に大きく入れることができるため、日本では親会社の名前をチーム名の一部に含めることが常識化した。
この裏技っぽい「ユニフォーム広告」を球団の歴史を通して唯一採用しなかったのが「読売巨人軍」で、胸の文字は「GIANTS」あるいは「TOKYO」だった。昨年から「YOMIURI」の文字になったことでさまざまな非難もあったが、この変更によって親会社からの「広告代」として流れ込む収入が多くなったことは間違いないだろう。
余談になるが、テレビ中継などが一般化する以前は胸の文字よりもチーム名に親会社の名前が入っていることの方が試合結果や順位表などとして活字になる機会が多くて効果が高かったと思われる。
さらに球場に親会社やグループ会社の広告が出ている例も多い。球場が別経営になっているところもあるが、その場合も球場運営側の収入が多ければ球場使用料などでの球団側の負担を減らす効果がある。

「肖像権、キャラクターグッズなどの使用料」については親会社に限った話ではないが、親会社が広告やイベントに積極的に選手などを利用すればその分チームに使用料を払うことによって支援することができる。

「チケットの買い上げ」
これが今回の話題の中心。チームにとっても、いくらテレビ中継放映料の比率が大きくなったといっても最も重要な収入源であることには変わりは無い。実は親会社の力の差が一番大きく出る部分でもあると思う。
なぜプロ野球の年間指定席は他のチケットに比べてあんなにも高いのか?売り込む対象が違うからだ。
要は企業が接待用や社員の福利厚生用として経費で購入してもらうことを期待している。そしてその多くを買うのが親会社やグループ会社となっている。
事実、ブレーブスが阪急からオリックスに売却されることによって大口のチケット買い取り先だった阪急グループやその取引先などをあてにできなくなり、当時のチケット営業担当はかなり苦労したらしい。(阪急は義理もあるのである程度購入していたようだが、当然傘下の球団だった頃よりは購入数は減っていただろう)
親会社としても使うつもりの無いチケットをあまり大量に買っているわけにはいかないので(税務署にも睨まれるから)、使い道が多い業種が有利になる面がある。
どこの会社でも高いチケットによる接待に見合うだけの得意先というものはあるものだけど、多くの広告主を持つテレビ局にとっては優先的にチケットを確保できるという特権は魅力的だ。
球団側からみればテレビ局を親会社にしているジャイアンツ(日本テレビ)、スワローズ(フジテレビ)、ベイスターズ(TBS)はそれだけである程度の収入を確保していることになる。
もちろんテレビ局側の理由としては根強い需要のあるスポーツ中継というコンテンツを確保するという意味の方が大きいだろうけど。だからどの球団でも多少は地元テレビ局が出資している。
さらにもっと安い一般向けチケットを景品や販促品として購入するパターンもある。一番わかりやすいのが新聞の定期購読の景品としてばら撒く例だ。
他にもいろんな名目で購入されているのだろうけど、グループ会社によるチケット買い支えの規模が一番大きいのは新聞社とテレビ局を直接親会社に持つジャイアンツじゃないかという気がする。

ジャイアンツが群を抜く人気球団であることは間違いない。
しかしその資金力を支えているのは親会社の力であり、また親会社もその参加球団の人気を巧みに業績に結び付けている。
仮に人気や実力でジャイアンツを越えるチームが現れたとしても、経営面でこれほどの相乗効果を生むことができるのだろうか?
このあたりが一時的にはジャイアンツを凌ぐ強さをもったチームが現れてもいずれは勢いをなくして行き、ジャイアンツのみが常勝の座にとどまっている理由だと思う。
(ライオンズも常勝に限りなく近いと言えるが、松坂がFA権を取得したときが正念場だ)

そんなことを考えてるので、よく聞く「金儲け主義に走らず、長期的な視点からチーム作りを」という意見には大いに疑問を感じる。
長期的に強いチームを作りたいなら、強くなることが金儲けに結びつく仕組みを作らなければいつか崩壊するはずだ。
すでにベイスターズやブルーウェーブはそういう結果を招いているし、今回はホークスだ。タイガースにもその兆候を感じている人は多いはず。

○余談
あまり関係のない話だけど、球場の収容人員数を考えると今年の実質観客動員数はタイガースがジャイアンツを上回ってた可能性もあるんじゃなかろうか。

2003-12-14 星野伸之

鷽スポーツ新聞さんより「村田兆冶、54歳で球速140km/h」の記事。凄すぎ。
この話題で頭に浮かんだのが20代の頃でも140km/hにはとても届かなかった名投手、星野伸之。

全力のストレートでも120km/h台後半。しかし80km/h台のスローカーブとフォークを武器に11年連続10勝以上、通算176勝、2041奪三振、最高勝率のタイトル2回。
「一度でいいからやってみたいこと」を聞かれて「球速表示で140km/hを出したい」と答えている。プロのピッチャーなのに星野にとっては140km/h台は夢の世界だ(笑)
本気で投げたカーブがすっぽぬけてキャッチャーの中嶋に素手でキャッチされた話はわりと有名。

その中嶋はオールスターのスピードガンコンテストでイチローと並んで147km/hを記録したことがある。
日本一の強肩捕手と日本を代表する遅球投手の組み合わせだったわけだ。
ちなみにそのスピードガンコンテストの次の試合(オールスター)でイチローは長谷川に声をかけられている。

長谷川「お前、145出したんだって?」
イチロー「147ですよ」
長谷川「うるさい、ピッチングはスピードだけではないということがわかっていないようだな(怒)」

テレビカメラの前だし、長谷川も本気で怒っているわけじゃない。ちょっと面白かった。
長谷川も星野ほどではないけど球の遅いピッチャーだが、今ではメジャーのセットアッパーだ。「ピッチングはスピードだけではない」を自ら証明している。

閑話休題。
星野の武器は時には80km/hを切るスローカーブ。ストレートとの速度差は50km/h近くになる。
このカーブが大きく曲がって非常に打ちにくいらしく、そのためにあの遅いストレートで三振に取ることができた。
そのかわりカーブのコントロールが決まらないと面白いように打たれてたけど、
ブライアントや清原が120km/h台の球を振り送れて空振りしてたんですよ。
横浜のローズは星野を「日本で一番速い球を投げる」とまで言っている。

星野は高卒でプロ入り。あの遅い球と細い体の選手を高卒で取るのはどうかという気はするが、それだけカーブが完成されていたということだろう。
スワローズの古田と同学年だが、古田が野村監督に使われて名前が知られだした頃には左のエースとしてチームに欠かせない存在だったので、同学年と知ったときには意外に思った。
ともかくタイトルこそ少ないが残した数字は間違いなく一流投手と言える。異色の投手として後世に名を残すにふさわしい、というか残さなきゃいかんよ。タイガース時代しか知らない人には何が凄いのか伝わりにくいだろうけど。
ちなみに奥さんは元ミス・ユニバース日本代表。

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